無線従事者資格23種類の全体像:アマチュア無線技士から一陸技・一総通まで

アマチュア無線を始めると「4アマ→3アマ→2アマ→1アマ」の先に、一陸技・一陸特・一総通といった名前が出てきます。名前は似ているのに何がどう違うのか、どれを取れば何ができるのかが分かりにくい。

日本の無線従事者資格は全部で23種類あり、それぞれの操作範囲は電波法施行令第3条で定められています。この記事では法令原文(e-Gov法令検索)と日本無線協会の試験情報をもとに、23資格の関係・操作範囲・難易度・おすすめの取得順序を整理します。

NOTE

操作範囲は電波法施行令第3条(2026年9月時点)の条文をもとに要約しています。合格率は日本無線協会が公表している実施結果(令和4〜6年度)の数値です。難易度の星印は筆者の主観による目安です。

全体像:8系統23資格と「通信操作・技術操作」#

23資格は次の8系統に分かれます。

系統資格(略称)主な操作主な用途・職業
総合無線通信士一総通・二総通・三総通通信操作(モールス含む)+一部の技術操作船舶・航空・海岸局の通信士、海上保安庁、自衛隊
海上無線通信士一海通・二海通・三海通・四海通船舶局・海岸局の通信操作+技術操作外航船の通信長、海上保安庁、海岸局
海上特殊無線技士一海特・二海特・三海特・レーダー級小型船舶・漁船の無線電話の操作漁船、プレジャーボート、国際VHF
航空無線通信士航空通航空機局・航空局の通信操作事業用操縦士、航空管制官、航空会社
航空特殊無線技士航空特自家用機などの国内通信自家用操縦士、農薬散布・測量など航空機使用事業の小型機
陸上無線技術士一陸技・二陸技無線設備の技術操作(すべての無線局)放送局、携帯電話基地局、無線機メーカー
陸上特殊無線技士一陸特・二陸特・三陸特・国内電信級陸上の無線局の限定された技術操作携帯基地局、タクシー無線、産業用ドローン、警察・消防
アマチュア無線技士1アマ・2アマ・3アマ・4アマアマチュア局の操作趣味

資格の名前を読み解く鍵は「通信操作」と「技術操作」の区別です。

用語意味具体例
通信操作電波を出して相手と通信する行為マイクで交信する、電鍵でモールスを打つ
技術操作無線設備を調整・保守・管理する行為送信機の出力調整、アンテナ整合、故障対応
外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさないものの技術操作電源スイッチやチャンネル切替など、電波の質を変えない操作業務用無線機のチャンネルを切り替える

「通信士」は通信操作が中心、「技術士」は技術操作のみ、「特殊無線技士」は特定の設備に限定した簡易な操作、と覚えると名前から中身を推測できます。アマチュア局の操作はこの区分の外にあり、第3条第1項の表からは明示的に除外され、第3項で別枠として定められています。

陸上系の資格(陸技・陸特1〜3級)に通信操作が含まれないのは、陸上の無線局の通信操作が電波法施行規則第33条で「簡易な操作」とされ、資格なしでできるためです。タクシーの運転手や消防隊員が無資格でマイクを握れるのはこの規定によります。例外がモールス電信で、これだけは国内電信級陸上特殊無線技士という通信操作の資格が残っています。さらに業務用の無線局には主任無線従事者制度(電波法第39条)があり、有資格者の監督下なら無資格者も設備を操作できます。アマチュア局はこの制度の対象外で、必ず本人が資格を持つ必要があります。

アマチュア無線技士(1〜4アマ)の操作範囲#

電波法施行令第3条第3項の条文を表にすると次のとおりです。

資格空中線電力使える周波数モールス(CW)
4アマ10W以下(8MHz以下、21〜30MHz)/20W以下(30MHz超)10MHz・14MHz・18MHz帯は不可不可
3アマ50W以下18MHz以上または8MHz以下(10MHz・14MHz帯は不可)
2アマ200W以下制限なし
1アマ制限なし(上限は局免許で決まる)制限なし

級を上げると何が変わるかを実用面で見ると次のようになります。

  • 4アマ→3アマ:モールスが打てるようになり、18MHz帯が開放され、出力が50Wまで上がる
  • 3アマ→2アマ:DXの主戦場である14MHz帯と10MHz帯が開放され、出力が200Wまで上がる
  • 2アマ→1アマ:200Wを超える局(500W・1kW)が開設できる

3アマの合格体験記は以前書きました。

運用日誌3アマ合格しました!2011/01/10
3アマ合格しました!

他の資格でアマチュア局を運用できるか#

「一陸技を持っていればアマチュア無線もできる」と聞いたことがあるかもしれません。答えは「できるが、4アマの範囲だけ」です。電波法施行令第3条第5項に、アマチュア局を操作できる他資格とその範囲が定められています。

保有資格アマチュア局で行える操作
一総通・二総通1アマの範囲(制限なし)
三総通2アマの範囲(200W以下)
一海通・二海通・四海通・航空通・一陸技・二陸技4アマの範囲(10W/20W、モールス不可)
三海通なし
陸特・海特・航空特(特殊無線技士すべて)なし

ポイントは3つあります。

  • 一陸技は技術系の最上位資格なのに、アマチュア局では4アマ相当。一陸技の試験にはモールス符号や国際法規の出題がないためです。CWを打ちたい、200Wで運用したい人は別途2アマ・1アマが必要です
  • 一総通・二総通は1アマ相当。総合無線通信士の試験にはモールスの実技(電気通信術)があるためです
  • 特殊無線技士(陸特・海特・航空特)ではアマチュア局は一切運用できない。逆にアマチュア無線技士の資格でも業務用の無線局は一切操作できません

陸上系:陸上特殊無線技士と陸上無線技術士#

ハムの間でよく話題になる「陸特」「陸技」はどちらも陸上の無線局を対象とした技術操作の資格です。

陸上特殊無線技士(陸特)#

資格操作範囲(要約)代表的な用途
三陸特陸上の無線局の25.01MHz〜960MHzで50W以下、1215MHz以上で100W以下の設備の外部転換装置の技術操作タクシー無線・簡易業務無線の基地局、警察・消防・鉄道無線の基地局、防災行政無線、産業用ドローンの画像伝送(2.4GHz帯1W・5.7GHz帯)
二陸特三陸特の範囲+1606.5〜4000kHzで10W以下の設備、陸上局のレーダー、衛星中継の50W以下の多重無線設備(VSAT)、受信障害対策中継放送局・コミュニティ放送局の外部転換装置気象レーダー・速度取締レーダー、VSAT地球局
一陸特二陸特の範囲+陸上の無線局の30MHz以上で500W以下の多重無線設備の技術操作携帯電話基地局、多重無線設備の固定局(マイクロ波中継)、放送中継(FPU)
国内電信級陸上に開設する無線局(海岸局・航空局などを除く)の無線電信による国内通信の通信操作自衛隊などのモールス通信

一陸特が「携帯電話の基地局の資格」と呼ばれるのは、基地局が多重無線設備にあたるためです。三陸特が「産業用ドローンの資格」と呼ばれるのは、無人移動体画像伝送システム(169MHz帯・2.4GHz帯1W・5.7GHz帯)を使うには三陸特以上が必要と総務省が定めているためです。技適の2.4GHz帯10mW機は資格も免許も不要、アマチュアバンドの5.6GHz帯FPVは4アマ以上とアマチュア局の免許で運用します。

陸上無線技術士(陸技)#

資格操作範囲
二陸技空中線電力2kW以下の無線設備(テレビ放送局は500W以下)、レーダー、960MHz以上の無線航行局の技術操作
一陸技すべての無線設備の技術操作(出力・周波数・局種の制限なし)

一陸技は基幹放送局(テレビ・ラジオの送信所)に必ず置かなければならない資格で、技術系の頂点にあたります。携帯電話事業者や無線機メーカーでも歓迎されます。

陸上系の包含関係#

技術操作の範囲は上位が下位を完全に含みます。

一陸技 ⊃ 二陸技 ⊃ 一陸特 ⊃ 二陸特 ⊃ 三陸特

国内電信級だけは通信操作(モールス)の資格なので、この列には含まれません。一陸技を持っていても国内電信級の操作はできず、逆も同じです。

海上系・航空系#

ハムには縁が薄いですが、全体像を把握するために簡単にまとめます。

資格対象通信操作技術操作英語・実技
一海通船舶局・海岸局国際通信可、モールス不可船舶局はすべて、海岸局は2kW以下英語、直接印刷電信、電話
二海通同上同上外部調整部分のみ、海岸局は250W以下同上
三海通同上同上外部転換装置のみ、海岸局は125W以下同上
四海通船舶局250W以下・海岸局125W以下国内のみ、モールス不可外部転換装置のみなし
一海特小型船舶・漁船のDSC付き無線電話(75W/50W以下)国際VHF可(国際電気通信業務を除く)外部転換装置のみ英会話、電話
二海特10W以下(中短波)/50W以下(25MHz以上)国内のみ外部転換装置のみなし
三海特5W以下の無線電話(25MHz以上)国内のみ外部転換装置のみなし
レーダー級船舶・海岸局のレーダーなし外部転換装置のみなし
航空通航空機局・航空局国際通信可、モールス不可外部調整部分、250W以下英語、電話
航空特自家用機・管制以外の航空局(50W以下)国内のみ外部転換装置のみ電話

パイロットは事業用なら航空通、自家用なら航空特が必要です。三海特はマリンVHFやプレジャーボートの資格で、講習会なら1日で取れます。海特の包含関係は「一海特 > 二海特 > レーダー級」(上位が下位を含む)で、三海特は5W以下の無線電話に限った別枠です。

総合無線通信士(総通)#

通信系の頂点が総合無線通信士です。一総通はすべての無線局の通信操作(モールス含む)に加え、船舶・航空機の技術操作と二陸技の範囲の技術操作ができます。「一総通+一陸技」で日本の無線局の操作すべてをカバーします。

資格通信操作技術操作アマチュア局
一総通すべての無線局(国際・モールス含む)船舶・航空機の設備、二陸技の範囲1アマ相当
二総通国内通信すべて、船舶・航空機の国際通信(一部制限)船舶500W以下、航空機、その他250W以下1アマ相当
三総通漁船を中心とした船舶の通信(国際除く)三陸特の範囲2アマ相当

試験は無線工学の基礎・無線工学A・無線工学B・法規・英語・地理の筆記に加えて、電気通信術の実技があります。一総通の電気通信術は和文モールス75字/分、欧文暗語80字/分、欧文普通語100字/分の送受信と、直接印刷電信・電話です。合格率は令和6年度で一総通4.5%、二総通3.7%、三総通2.9%と、23資格の中で群を抜いて低い数字です。

難易度マップ:試験科目と合格率#

23資格を次節の「取得難易度」の5段階(★=入門〜★★★★★=最難関)で並べ、試験科目・合格率・実施方式・受験手数料をまとめました。合格率は総務省「無線従事者試験の実施結果」の令和6年度の数値、手数料は2026年10月1日申請分から適用される改定後の金額です(2026年9月までは各資格で1,000〜5,000円ほど安い)。

難易度資格試験科目(問題数)実技合格率実施方式手数料
三海特工学10・法規20(正誤式)なし95.0%CBT随時6,900円
三陸特工学12・法規12なし79.1%CBT随時6,900円
レーダー級工学12・法規12なし100%筆記 年3回6,900円
二陸特工学12・法規12なし83.4%CBT随時6,900円
4アマ工学12・法規12なし74.6%CBT随時5,700円
二海特工学12・法規12なし84.3%CBT随時6,900円
★★3アマ工学14・法規16(モールス符号の知識問題を含む)なし79.0%CBT随時6,000円
★★航空特工学12・法規12電話(欧文通話表)81.7%筆記 年3回7,800円
★★一海特工学12・法規12・英会話5電話59.4%筆記 年3回9,200円
★★★四海通工学18・法規20なし56.3%筆記 年2回8,200円
★★★2アマ工学25・法規30(計算問題あり)なし54.5%筆記 年2回9,400円
★★★航空通工学14・法規20・英語(筆記+会話)電話42.7%筆記 年2回11,000円
★★★★一陸特工学24・法規12(3時間、計算問題が多い)なし36.3%筆記 年3回7,200円
★★★★1アマ工学30・法規30(計算問題が多い)なし31.1%筆記 年2回10,800円
★★★★三海通工学15・法規20・英語直接印刷電信・電話38.8%筆記 年2回12,100円
★★★★二陸技工学の基礎25・工学A25・工学B25・法規20なし28.2%筆記 年2回16,400円
★★★★国内電信級法規12和文モールス75字/分 送受信5.1%筆記 年3回6,700円
★★★★★二海通工学の基礎・A・B・法規・英語直接印刷電信・電話23.1%筆記 年2回18,600円
★★★★★一海通工学の基礎・A・B・法規・英語直接印刷電信・電話38.5%筆記 年2回20,000円
★★★★★一陸技工学の基礎25・工学A25・工学B25・法規20なし24.0%筆記 年2回18,800円
★★★★★三総通工学の基礎・工学・法規・英語和文・欧文モールス2.9%筆記 年2回15,000円
★★★★★二総通工学の基礎・A・B・法規・英語・地理和文・欧文モールス・電話3.7%筆記 年2回23,300円
★★★★★一総通工学の基礎・A・B・法規・英語・地理和文・欧文モールス・直接印刷電信・電話4.5%筆記 年2回26,000円

表の読み方で注意したい点があります。

  • 合格率は難易度そのものではない。一陸特(36%)が1アマ(31%)より高いのは、受験者の多くが仕事で必要な技術者だからです。逆に国内電信級の5%は、受験者が少ないうえにモールス実技の壁が高いためです
  • 一陸技・二陸技・総通・海通には科目合格制度がある。合格した科目は試験の翌月から3年間免除されるので、複数回に分けて取るのが定石です
  • CBTになっているのは3アマ・4アマ・二陸特・三陸特・二海特・三海特(2022年から)。全国のテストセンターで随時受験でき、申請から14日後以降に受けられます。1アマ・2アマ・一陸特・陸技・通信士は筆記のみで、1アマ・2アマは2025年度から5月・11月の年2回に変わりました
  • モールスの実技は3アマが2005年、1アマ・2アマが2011年に廃止され、今は法規の中で符号の知識を問う問題だけです。実技が残っているのは総通と国内電信級だけです

勉強時間の目安を、合格体験記などで見かける数字からまとめると次のとおりです(あくまで目安)。

資格目安前提
4アマ・3アマ1〜2週間問題集の丸暗記で足りる
2アマ100〜150時間計算問題の練習が必要
1アマ60〜80時間(3アマ・4アマ保持者)、初学者は150時間半年計画が現実的
一陸特120〜400時間無線工学は1アマと同等かやや上
一陸技300〜1,000時間、1〜2年科目合格で分割するのが定石
航空通200時間程度英語は英検2級程度、リスニングあり
一総通学科300時間+モールス実技に年単位一陸技と並ぶ最難関

取得難易度 偏差値表(独断と偏見)#

掲示板でよく見かける「資格偏差値表」の無線版です。ただし採点の軸は「試験が難しいか」ではなく「無資格の人が免許を手にするまでにどれだけ大変か」にしました。合格率で並べると受験者層の違い(4アマ国試は独学初心者、1アマは全員が有資格者、一陸技は工学系の学生や技術者)に引きずられるので、時間で測ります。

ルールは1つだけです。

  • 講習会・eラーニングで取れる資格は、その授業時間(無線従事者規則で決まった公式値)。国家試験でしか取れない資格は、合格体験記から見た標準的な自習時間(推定)
  • 偏差値 = 32 + 6 × log2(時間 ÷ 6)。講習1日(6時間)が32で、時間が2倍になるごとに6ずつ上がる

無線従事者資格の取得難易度偏差値表(JE1WFV 独断と偏見版)

取得難易度の偏差値表。クリックで拡大。X での共有用に作った画像です

テキスト版の表(画像と同じ内容)

内訳と、参考までに令和6年度の合格率を並べます。時間の欄で「講習」「養成課程」は公式の授業時間、「国試」は推定です。

偏差値資格最短ルート時間合格率(国試)
80一総通国試のみ約1,500h4.5%
78二総通国試のみ約1,200h3.7%
74一陸技国試のみ約800h24.0%
74三総通国試のみ約800h2.9%
72一海通国試のみ約600h38.5%
72二海通国試のみ約600h23.1%
68二陸技国試のみ約400h28.2%
68国内電信級国試のみ約400h5.1%
64三海通国試約250h38.8%
601アマ国試のみ約150h31.1%
60一陸特国試(養成課程は要受講資格)約150h36.3%
56航空通養成課程16日(高卒以上)100h42.7%
532アマ4アマ講習→3アマ短縮→eラーニング約70h54.5%
52四海通国試約60h56.3%
48一海特講習会7日39h59.4%
42航空特講習会3日18h81.7%
413アマ4アマ講習+短縮コース16h79.0%
39二海特講習会2日13h84.3%
364アマ講習会2日10h74.6%
36二陸特講習会2日9h83.4%
34レーダー級国試約8h100%
32三陸特講習会1日6h79.1%
32三海特講習会1日6h95.0%

合格率と偏差値がずれる箇所には理由があります。

  • 総通3つは合格率がどれも3〜5%台ですが、学科の量は一総通(工学3科目+地理)と三総通(工学2科目)で倍違います。低い合格率はモールス実技と受験者の少なさ(年間39〜176人)によるもので、取得までの時間で見ると差が付きます
  • 一陸技の合格率24%は総通より高いものの、科目合格制で複数回に分けて受ける人が多く、受験者も工学系に偏っています。取得までの時間では二総通に次ぐ位置です
  • 4アマ・陸特・海特は講習会ルートがあるので、国試の合格率(74〜84%)に関係なく1〜2日で確実に取れます。国試を受けるのは独学派だけです
  • 2アマは講習だけで取れる最上位で、3アマから4か月のeラーニング(修了試験の合格率96%)で届きます。1アマは養成課程がなく、ここで初めて試験勉強が必要になります

資格情報サイトの偏差値(一総通73・一陸技66・一陸特52・1アマ45 など)は試験の難しさを見た評価なので、この表とは軸が違います。

試験科目の免除:ステップアップの近道#

すでに持っている資格によって、別の資格の試験科目が免除されます(無線従事者規則第8条、日本無線協会「表7」)。主なものを表にしました。

持っている資格受ける試験免除される科目残る科目
一陸技一総通・二総通無線工学の基礎・A・B法規・英語・地理・電気通信術
一陸技一海通・二海通無線工学の基礎・A・B法規・英語・電気通信術
一陸技三総通無線工学の基礎・無線工学法規・英語・電気通信術
一陸技三海通・四海通・海特・航空通・航空特無線工学法規(と英語・実技)
二陸技二総通・二海通無線工学の基礎・A・B法規・英語・(地理)・電気通信術
二陸技一総通・一海通無線工学の基礎無線工学A・B・法規・英語・(地理)・電気通信術
二陸技三海通以下・航空系無線工学法規(と英語・実技)
一総通一陸技法規無線工学の基礎・A・B
二総通二陸技・一陸特法規無線工学
二総通二海通無線工学の基礎・A・B法規・英語・電気通信術
一海通一総通・二総通・二陸技無線工学の基礎残り全部
二海通一海通法規・英語・電気通信術無線工学の基礎・A・B
三海通一海通・二海通法規・英語・電気通信術無線工学(の基礎・A・B)
航空特航空通電気通信術無線工学・法規・英語

この表から分かることが3つあります。

  • 一陸技は最強の免除起点。無線工学系の科目がごっそり消えるので、一陸技を取った後に通信士系へ進む人が多い
  • アマチュア無線技士と陸上特殊無線技士は表に登場しない。1アマを持っていても一陸技の試験は1科目も免除されず、一陸技を持っていても1アマの試験は免除されません(代わりに施行令で4アマ相当の操作が直接認められます)
  • 免除は工学系→通信系の一方向が基本。通信士の資格から陸技への免除は法規か無線工学の基礎だけで、工学A・Bは自力で受ける必要があります

このほか、認定学校(工業高校・高専・大学の無線関係学科)の卒業後3年以内なら無線工学の基礎・英語・電気通信術の一部が免除されます。科目合格は3年間有効です。一海通・二海通・航空通の保持者は6か月の業務経歴で二陸特を無試験で取得できるなど、業務経歴による認定制度もあります。

ラーニングパス#

23資格の関係を、取得の順序として並べると次のようになります。矢印は「この順で取ると学習内容が積み上がる」という意味で、法的な受験資格の制限ではありません。無線従事者試験はどの級もいきなり受験できます。

[趣味] 4アマ → 3アマ → 2アマ → 1アマ
↓ 工学のレベルが近いので直行が現実的
[陸上] 三陸特 → 二陸特 → 一陸特 → 二陸技 → 一陸技
↓ 無線工学3科目が免除
[通信] 三総通 → 二総通 → 一総通 一陸技 → 一総通 / 一海通
[航空] 航空特 → 航空通
[海上] 三海特 → 二海特 → 一海特 → 四海通 → 三海通 → 二海通 → 一海通

パスA:ハムの王道(4アマ→3アマ→2アマ→1アマ)#

ステップ取り方期間・費用の目安
4アマJARD講習会(2日)またはCBT講習会26,250円/CBTなら問題集1〜2週間+5,700円
3アマ4アマ保持者はJARD短縮コース(1日)、または直接CBT短縮コース15,250円/CBT 6,000円
2アマ3アマ保持者はJARD eラーニング(4か月)、または国試(5月・11月)eラーニング48,250円(修了試験合格率96%)/国試9,400円
1アマ国試のみ(5月・11月)。養成課程はない3アマ保持者で60〜80時間の勉強、10,800円

今なら4アマを飛ばして3アマから始めるのが定石です。CBTの問題数は工学14・法規16と4アマとほとんど変わらず、増えるのはモールス符号の暗記だけです。講習会派なら4アマ講習会→3アマ短縮コースの2段構えが安上がりです。

2アマは2015年からeラーニング養成課程の対象になり、3アマ保持者なら4か月の学習と修了試験(CBT)で取れます。1アマだけは国家試験一本なので、2アマまで講習で来た人もここで初めて「試験勉強」が必要になります。

パスB:通信インフラの技術職(陸特→陸技)#

ステップ取り方備考
三陸特・二陸特講習会(1〜2日)またはCBTドローン・タクシー無線・消防など、業務で必要な人向け
一陸特国試(年3回)または養成課程(8日間、69,150円)携帯基地局の保守で必置。工学は1アマと同等かやや上
二陸技国試(7月・1月)4科目。科目合格は3年有効
一陸技国試(7月・1月)放送局の必置資格。技術系の頂点

ハムがこの道に入るなら、1アマから一陸技へ直行するのが現実的です。1アマの無線工学は一陸技の「無線工学の基礎」の入口に相当し、一陸特・二陸技は一陸技を取れば操作範囲ごと包含されるからです。一陸技は科目合格制なので、1回目に無線工学の基礎と法規、2回目に無線工学AとBという分割が定石です。

パスC:一陸技から通信系の頂点へ#

一陸技を持っていると、一総通・一海通の無線工学3科目(基礎・A・B)が免除されます。残るのは法規・英語・電気通信術(一総通は地理も)で、一総通の場合はモールス実技が最大の壁です。「一総通+一陸技」で日本の無線局の操作すべてをカバーするので、資格コレクターの最終到達点はここです。

パスD:空と海#

パイロット志望なら航空特(養成課程3日)から航空通(英語のリスニングあり)へ。船なら三海特(講習会1日)→二海特→一海特と上がり、外航船の通信士を目指すなら海上無線通信士(英語+直接印刷電信の実技)に進みます。ハムとの接点は薄いですが、四海通以上と航空通は4アマ相当の操作もできます。

隣接資格:電気通信主任技術者・工事担任者・教員免許#

無線従事者は電波法の資格ですが、電気通信事業法の資格とも免除関係でつながっています。一陸技を取ると次の資格で科目免除や受験資格が得られます。

資格根拠法一陸技で得られるもの
電気通信主任技術者(伝送交換・線路)電気通信事業法「電気通信システム」が免除。残りは設備管理と法規の2科目
工事担任者(総合通信など)電気通信事業法「電気通信技術の基礎」が免除
高等学校教諭一種(工業)・中学校教諭二種(職業)教育職員免許法施行法3年以上の実地経験があれば教育職員検定で免許状を取得できる
消防設備士(甲種)消防法受験資格を満たす
職業訓練指導員(電子科)職業能力開発促進法実技試験と学科の一部が免除

逆方向もあります。伝送交換主任技術者を持っていると、陸技と一・二級の総通・海通の「無線工学の基礎」と「無線工学A」が免除されます(日本無線協会「表9」)。線路主任技術者なら「無線工学の基礎」だけです。通信キャリアの技術者が一陸技と電気通信主任技術者をセットで持っているのは、互いに免除し合う関係だからです。

二陸技を取った後に無線設備の操作に3年以上従事すると、一陸技の「無線工学の基礎」と「法規」が業務経歴で免除され、残りは無線工学AとBだけになります(「表8」)。7年以上なら認定講習課程を修了するだけで試験なしに一陸技を取得できます(無線従事者規則第33条)。アマチュア局の操作は経歴に数えられないので、就職してから一陸技を狙う人向けの道です。

まとめ#

  • 23資格は8系統。名前の「通信士」は通信操作、「技術士」は技術操作、「特殊」は限定された簡易な操作
  • アマチュア局は別枠。1〜4アマの差は出力・周波数・モールスの3点で、4アマ→3アマでモールスと18MHz、3アマ→2アマで14MHzと200W、2アマ→1アマで200W超が解禁される
  • 他資格でハムができるのは総通・海通(三海通除く)・航空通・陸技だけ。一陸技でも4アマ相当、1アマ相当なのは一総通・二総通のみ
  • 陸特は仕事の資格、陸技は設備の資格。一陸特は携帯基地局、三陸特はドローン、一陸技は放送局
  • 免除の起点は一陸技。アマチュア無線技士と陸特からの免除はゼロ
  • 取得の大変さは「講習で取れるか、国試しかないか」で段が変わる。2アマまでは講習で届き、1アマから先が試験勉強の世界
  • ラーニングパスはハムなら3アマ→2アマ→1アマ、その先は一陸技→一総通が最終到達点

ハムとしての実利だけ考えるなら1アマまでで十分です。その先の一陸技・一総通は「無線を仕事にする」か「資格コレクション」の世界になります。とはいえ1アマの無線工学まで来ると一陸技の入口が見えるので、次の目標として悪くない選択肢です。

参考資料#

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